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盛岡地方裁判所二戸支部 昭和37年(ワ)5号 判決

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は被告は原告に対し金三一万三、八三七円三〇銭とこれに対する昭和三一年七月一日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え、訴訟費用は被告の負担とする旨の判決並びに仮執行の宣言を求めその請求の原因として

原告は被告から(一)昭和三〇年四月九日金三万円翌一〇日金七万円計金一〇万円を(二)昭和三〇年一二月二〇日金八万円を各借用した外(三)訴外瀬川政吉が原告の為め被告より昭和三〇年九月二六日金六万五、〇〇〇円借り受けて居るのでこの分を含めても原告の被告に対する借用金は合計金二四万五、〇〇〇円に過ぎずこれに対する約定利息を加算しても昭和三一年六月三〇日現在で合計金二八万五、九六二円七〇銭に止まるものなるところ原告は被告の要求の侭に昭和三〇年九月二六日訴外瀬川政吉を介して金五万円更に昭和三一年六月三〇日原告から直接被告に金五五万五、〇〇〇円計金六〇万五、〇〇〇円を弁済として支払つたので、右正当の債務を超過した支払い分は明らかに被告において不当に利得したところのものであるからこれが返還を求めるため本訴に及ぶ旨陳述した。

(立証省略)

被告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め答弁として

原告主張の昭和三〇年四月九日被告が原告に金員を貸与したことはあるが、この時貸し渡したのは金一〇万円ではなく金三〇万円である。このときは瀬川政吉を立会人とし原告に金三〇万円を利率日歩金二〇銭、弁済期昭和三〇年六月三〇日と定めて貸与し、原告所有の別紙目録記載の山林に抵当権を設定することを約し、司法書士小野寺常蔵方に赴き借用証書の作成および抵当権設定登記手続を依頼した。同司法書士は契約通りの日歩二〇銭の分と利息制限法に従う年利一割八分の分と二た通りの借用証書を作成し後者を登記申請書の添付書類として使用した。原告は印鑑、印鑑証明書、山林の登記済証を同司法書士に託して元金を金三〇万円とする抵当権設定の登記手続方を依頼し、被告もその登記を依頼した。その結果依頼どおりの登記がなされたのである。貸金三〇万円はこの日現金で原告に交付した。尚被告は原告に金一〇万円を貸与したことはあるがそれは右原告主張の日ではなく昭和二九年一一月二〇日のことである。この時は被告方で借用証書を作成したが、金額一〇万円を月利五分期限は昭和三〇年九月二六日と定め瀬川政吉を保証人として貸付けることとし、即座に現金を手渡した。期限の昭和三〇年九月二六日に至り瀬川の乞を容れ同人に金六万五、〇〇〇円を貸付けたこと、同日瀬川から利息分として金五万円を受領し同額の受領証を同人に交付したことは認めるが、右金五万円は昭和二九年一一月二〇日に原告に貸付けた元金一〇万円に対する月利の割合による一〇ケ月分の利息として原告の代理人たる瀬川から支払を受けたもので原告主張のような関係の利息として授受されたものでない。その二、三日後に原告から元金一〇万円の返済を受けたのでこの賃借に関する限り債権債務は消滅した。原告主張の(二)の賃借の事実を否認する斯様な貸借の事実はない。被告が司法書士小野寺常蔵方で原告から金五五万円の返済を受けたことは認める。これは前記金三〇万円の貸付元金と利息の合計額として受取つたもので、原告主張のような貸金とは何等関係がない。返済にあたり原告は金五五万円の請求に対し些かも不服などを述べたことはない。金員受領に際し抵当権設定登記の抹消登記手続を経た上その登記済証と借用証文を原告に返還した。

と陳べた。

(立証省略)

別紙

目録

岩手県二戸郡福岡町下斗米字取合岸一八番

一、山林   一町八反五畝歩

同右一九番の一

一、山林   一町五反七畝四歩

同右同番の二

一、山林   一反一九歩

同右一七番の一

一、山林   二町一反六畝二二歩

同右同番のイ

一、山林   一反一四歩

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